食用菊

 新潟・山形・青森の伝統野菜

 食用菊は、その名の通り食べる菊です。旬は9〜12月です。涼しい気候を好む品種が多いので、東北地方や新潟などが主産地です。これらの地域では、刺身のツマとしてではなく、おひたしの様にして食べるのだそうです。

 新潟の食用菊は、「かきのもと」という種類。 但し、この呼び名は下越地方のもので、中越地方では同じ物を「おもいのほか」と呼びます。(上越地方では食用菊の栽培は少ないということです。)
 名前の由来ははっきりしないのだそうですが、昔から農家の垣の下に栽培されてきたから「かきのもと」で、食べてみたら思いのほか美味しかったから「おもいのほか」だとか言われているようです。
 たっぷりの沸騰したお湯に酢を少々加えて、菊をいれてサッと短時間で茹で上げ、醤油をかけて食べるそうです。ポン酢も合いますが、上に鰹節やゴマなどをかけると、菊の香りが損なわれて合わないということです。

 山形県庄内地方も栽培が多い地域で、こちらは「延命楽(えんめいらく)」と呼ばれますが、品種としては新潟の物と、ほぼ同じ物のようです。
 山形市周辺では、同じ物を「もってのほか」と呼びますが、これは、あまりに美味しいから、嫁に食わせるのはもってのほかだということだとか…。(ホントかどうか、知りません。「皇室の御紋章である菊を食べるのはもってのほかだ」ということからだという説もある様です。)
 この地方では、花をばらばらにはずして茹で、甘酢醤油で、香りを楽しみながら食すということです。

 青森の物も有名です。こちらは「阿房宮(あぼうきゅう)」という品種です。先の物とは違い、黄色い花の品種です。
 阿房宮というのは、秦の始皇帝が建てた宮殿の名ですが、来歴には諸説あってはっきりしないそうです。(南部藩主が京都の九条家の庭に咲いていた物を株分けしてもらって藩内に植えたとか、天保年間に八戸の商人が大阪から観賞菊としてとりよせたものの実生品種だとか…。)
 苦味が無くて甘く、香り・歯ざわりが良い、優れた品種だということです。生の物は、おひたしや味噌汁の具にしますが、この地方では「菊海苔(きくのり)」と呼ばれる乾燥品も作られます。
 花びらだけむしり、型に入れて蒸して乾燥させ、板状にするのです。(干し菊・蒸し菊とも呼ぶそうです。)これは、湯で戻して、菊ずし・梅肉あえ・マヨネーズあえにするとよいということです。

   (野菜果物大百科第84号より)

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